あなたは「カービングターン」についてこんな印象を持っていませんか?
「カービングターンなんてスピードを出せばできるんでしょ」
「一本のラインで滑ることがカービングだよ」
「カービングはズレちゃいけないんだよ」
もしどれかに当てはまるなら、この後に書かれている内容を読んでみてください。
(photo credit: Sun Mountain Yabuli via photopin (license))
目次
■カービングのよくある誤解
始めにカービングターンのよくある誤解から解いていきます。
誤解その1「スピードを出せばカービング?」
「スピードを出してターンができれば、カービングターンでしょ」と思っていらっしゃるなら、ちょっと待ってください。
確かにカービングターンをするにはある程度のスピードは必要です。
しかし、単純にスピードを出せばカービングターンと言えるのでしょうか。
単純にスピードを出していればそれなりに楽しいものですが、「ターン」していると言っていいものでしょうか。
もちろんカービングターンを上達させる上で、「スピード耐性」は必要です。
少しのスピードでも恐がって腰が引けてしまってはカービングどころではありません。
ある程度のスピードでもターンが出来て、初めてカービングに挑戦できるというものです。
そういう意味でもカービングと滑走スピードには深い関係があると言っていいです。
ただし、スピードが早いだけではカービングはない!ということです。
単純に滑走スピードが早いだけで、縦に落とされる滑り(ターン弧がやたら大きい滑り)ではカービングターンとは言えないです。
滑走スピードを上げることはカービングターンを覚えるのに必要なスキルの一つです。
カービングターンがうまい方は、当たり前ですが滑っているスピードも速いです。
それは、言い換えると「コントロールできるスピード領域が広い」ということを意味します。
コントロール出来るスピードとは、「すぐに止まれること」だと私は思います。
もしスピードを出すことに自信がある人でも、そのスピードですぐに止まる自信がないのであれば、まずは止まる練習から行うことをおすすめします。
では、スピード以外にどんな要素がカービングターンには必要なのでしょうか。次の項以降で説明していきます。
誤解その2「カービングは一本の線で滑ること?」
「カービングは一本の線で滑ること」とも言われていますが、実はそれはカービングターンの本質ではないと思います。
(結果的に、一本の線で滑っているように見えるわけですが・・・。)
色々なサイトで「カービングは一本の線で滑ること」と書いているものを見うけられますが、本当にそうなんでしょうか。
そもそもカービングの意味は、「彫る」という意味の「carving」からきていて、実はカービングは「曲がる」という意味の「curving」ではありません。
もしカービングターンが後者の意味だったら、カービングターンの直訳は「曲がるターン」となってもはや意味不明ですね。
”カービングターン”の本当の意味は「雪面を彫りながらターンする」ことです。
ですのでカービングターンは「彫りながら滑る」んだなと頭の中でイメージしてください。
「彫りながら滑る」
その結果として
「一本の線で滑っているように見える」
というわけです。
そしてより深く雪面を彫るためには、板を立てる必要があります。
それがいわゆる「角付け」です。「角付け」とは雪面に対して板を立てることを言います。
角付けを行うことによって、サイドカーブが雪面と接して、そのサイドカーブ径に従ってカービングターンを行うことが出来ます。
スノーボードの板が定規のような「長方形」でない理由はここにあります。
(詳しくはコチラの記事もご覧ください。カービング初心者が最低限知っておきたい2つの要素とは?)
スノーボードはノーズとテールに比べ中央部分が「くびれ」ています。その「くびれ」度合いは板によって様々です。
あなたがどんなスタイルで滑るかによって適切なサイドカーブ径がある程度決まってきます。
ロングターンでスピードを出して滑りたいのであれば、サイドカーブは大きめの方が良いですし、
グラトリなどのトリックをする方や、ショートターンをメインに考えてる方はサイドカーブは小さめの方が良いです。
スノーボードにはサイドカーブがあるために、角付け(板を立てること)をすると 、そのサイドカーブにしたがってターンすることが出来るのです。
つまりカービングターンとは「スノーボードの板の特性」を最大限利用したターンとも言えます。
これが実はとても大切です。
カービングターンは、板に仕事をしてもらってナンボです。
言い換えると、乗り手であるあなたは頑張ってはいけないんです。
いいですか。
カービングターンでは、あなたは頑張ってはいけないんです。
板を立ててあげて、あとは 板が最大限仕事をしやすいポジションにいるだけでカービングはできます。
しかし、多くの方はがんばり屋さんです。
それが逆に仇となります。
カービングターンの覚えたての頃は、頑張ってはだめです。
ガンガン、さぼってください。
それでいいんです。
それいいんです。
そうした方が板が勝手に曲がってくれるのです。
誤解その3「カービングターンは”ズレ”てはいけない?」
角付けが出来るようになって、カービングが出来始める方に多く見られる誤解です。
カービングターンはズレてはいけないという認識です。
確かに、カービングターンと聞くとズレがなく一本の線で滑るイメージが強いと思います。
一本の線=ズレてはいけない
という認識なんだと思います。
「カービングターンはズレてはいけないのか?」
これはカービングターンをする人に大きな誤解の一つだと思いますので、しっかりと読んでもらいたいところです。
この答えはJSBAのスノーボード教程に書かれています。
カービングターンとは「ズレの少ないターン」
実はこう書かれています。
決してズレてはいけないとは一言も書いていません。
要は、カービングターンはズラしても良いんです。
と、同時に感じるのが
「ズラしてカービングになるの?」
ということだと思います。
ポイントはターンのどの部分でズラしを使うかです。
もちろんターン後半にズレが集約すると「ガガガッ」という音を立てるほどズレが大きくなってしまいます。
そうなってはカービングとは呼べないターンです。
ターン後半にズラしを多用すると、カービングになりにくいです。
では、ターンのどの部分でズラシを利用するとカービングターンとしてきれいなターン弧をつくれるのでしょうか?
実は、、、
ターン”前半”にズレを用いると、均一な滑走ラインになりカービングになります。
実はこれを意識的に出来ているライダーはごく一部の人のみです。
というより、前半にずらすと言う認識すらないと言った方が正しいです。
ターン前半からしっかりと板と立てて角付けを行えるようになると、どれくらい雪面を彫りながらズラせばいいか分かります。
そこから、どの程度ズラすかはあなた次第です。
そして上級者になればなるほど、カービング中のズレをコントロールしています。
ズレを制するものがカービングを制す
と言っても過言ではありません。
カービング中にもズレを用いることで適切にスピードをコントロールするわけです。
常に自分でコントロールできるスピードで滑り続ける。
そのためには、ズレをコントロールするスキルが必要になります。
そして、上級者はその「ズレが少ないターン」の中で「キレ」を使って滑ることが出来ます。
(このキレについては「カービングターンに「キレ」を出す10か条」で説明します。*現在執筆中です)
■カービングターンの導入|ズレの少ないターンとは
では、その「ズレが少ないターン」とはどういった滑りなのでしょうか。
「ズレをコントロールする」とはどういうことなのか。
それをこの項で説明していきます。
例として、ペンキなどを塗る時に使う「刷毛(ハケ)」でイメージをつかんでみましょう。
イメージをつかんでもらうために一つあなたに質問です。
あなたは刷毛(ハケ)の”横幅全体”を使って、「細い線」を書こうと思ったらどう使いますか?
刷毛の角だけを使うなどはダメです。刷毛”全体”をしっかりと全部使って、かつ細い線を書いてください。
「自分だったらどう使うだろうか・・・」と、しっかりと頭の中でイメージしてみてください。
あなたは刷毛で絵を描いています。しかし、刷毛は一つしかありません。そんな中で太い線・細い線を使い分けて絵を書くとしたら、あなたはどうやって書きますか?
普通に使うなら下図のようになると思います。
しかし、これでは細い線は書くことはできません。
この方法とは違う書き方が必要になります。
さぁ、それでは正解の発表です。
正解は、、、、「刷毛を斜めにして使う」です。
斜めに滑らせることでペンキを細く描くことが出来ます。さらに斜めの具合をもっと強くして真横にすれば、さらに細い線が描くことが出来ます。
どうですか?あなたは正解できましたか?「なーんだ、そんなことか」と思うかもしれませんが、「そんなこと」がカービングターンで自由自在にゲレンデを滑るためには必須の知識なのです。
ポイントは「進む方向に対して刷毛を斜めにすると、ペンキ幅は小さくなる」
という点です。
その「刷毛を斜めにして使う」を利用して、3種類の幅の円弧を書いてみましょう。
一つは幅の極太、二つ目は刷毛を斜めにして中太、そして三つ目は刷毛を横向きに使って極細の線です。
進む向きに対して刷毛を垂直にしたらペンキの跡は広く(極太に)なります。一方で刷毛を進む向きに対して斜めに使っていったら・・・?ペンキの跡は狭くなりますよね。その斜めの向きをどんどん大きくしていくと、さらに細い線を書くことができます。実はこれが、カービングターンのイメージなんです。
■カービングターンの「滑走ライン」のイメージとは
さらにわかりやすいように模型を使って説明していきます。
最初にご紹介するのは、ズレの大きなターンです。ターン中盤以降で板が横を向き始め、結果としてターンの軌跡は幅の広い(ハケでいうと極太)ものとなっています。これは初心者の方に良くある滑り方です。前足に体重を乗せて、後脚を振り出すように滑るとこのような滑りになります。
この滑り方は自分の筋力を使って後脚を振り出しているので、筋肉は疲労しやすいです。
「一本だけ滑っただけなのにやたら疲れる・・・」
ということはありませんか?もしあなたがそう感じるのであれば、もしかしたら後脚を振り出すというムダな動きが多いために人より疲れやすいのかもしれません。
後脚を振り出して滑る方の特徴として、ターンが縦長になるという特徴があります。別の言い方をするとこの滑り方はターン弧になりにくいんです。
後脚を振り出す時に、縦に落ちていきやすいために、滑った跡が半円というより「コ」の字型のようになりやすいんです。
ただし、決してこの滑り方が悪いのではありません。スノーボード初心者の方はこういった後脚を振り出した方が、ターンスピードを調整しやすい場合があるからです。
ただし、カービングターンをする上では「自らの意思でターンを使い分ける」必要があるというだけです。
ターンがおぼつかないという方は、前足にしっかりと乗り前足に軸をつくることでコンパスのように簡単にターンが出来るので、まずはそちらの方法でしっかりとターンの練習をするようにしてください。
一方で、ズレの少ないターンがコチラの連続写真です。
見て欲しいポイントは、板の先(ノーズ)が常に進んでいく方向に向いている点です。
特に重要なのはターンの中盤で板の先がしっかりと谷方向に向いているということです。
カービングターンをやり始めた人にありがちな失敗は、板を谷方向に向ける時間が短すぎるということがあります。ターンのやり始めは、すぐさまターンを仕上げることでスピードをつきにくくしていました。しかし、急激な方向転換は板がズレる方向へに動いてしまいます。そうなってくるとカービングターンではなくなってきてしまいます。
以上のように、カービングターンをするには、「進む方向に板の先を向け続けること」が重要なポイントです。そうすると自然にズレの少ないターンになり、そこから板を立て角付けをすることでよりキレのあるカービングターンになっていきます。
やみくもに「一本の線で滑る」ということだけが頭にあると「ズレてはいけない」という思考回路になり、カービングの上達は逆に遅れてしまいます。
もちろん緩斜面などでは、フルカーブで滑ることもありますが、中級斜度(15°~20°)以上ではフルカーブはよほどのことがない限りしません。
バッジスト1級の場合でも中級斜度の場合はフルカーブは求められていません。バッジテストはズラして良いんです。さらに言えばインストラクター検定でも同様です。私がA級を受験したときも「ズレ」は使いました。
問題はそのズレの「量」をいかにコントロールするかということです。バッジテスト1級なら1級レベルの、インストラクター検定ならインストラクター検定のレベルにあったズレの量で滑る必要があります。つまり、そのズレのコントロールの質が高ければ、バッジテストやインストラクター検定でも正しく評価されます(バッジテストに関しては別の機会に詳しく説明します)。
検定でズレが許容されている理由として、私が思うところは、ズレをコントロールすることでカービングを「安全」に楽しむことができるためと考えています。ただやみくもにスピードを出すのではなく、それをコントロールできてこそ上級者なのではないでしょうか。
■まとめ
カービングターンとは「雪面を彫って滑るターン」のことです。また、カービングターンにはある程度のスピードが必要で、その中で角付けを行うことで自然とターンできるという「板の特性」を十分に利用した滑りと言えます。そして、カービング中の「ズレ」を適切にコントロールすることで、自分の思い描いたとおりのカービングターンができます。
最後に、安全に上達するためにもあまり無理せずに周りの状況を確認しながら練習をしましょう^^
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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はじめまして。こうぞうです。コメントありがとうございます。
「目線」を意識されてはどうでしょうか?クロスオーバーは「目線」を変えるだけで勝手に行われます。
自転車に乗ってる時に「切り替え」を意識しないでも勝手に連続ターンできると思いますが、感覚的にはそれと同じです。
下の記事でも書きましたが、ターンピークから次のターンピークを見るようにすると切り替えがスムーズに行われやすいです。
結果的にクロスオーバーもスムーズにできます。まずはこれを緩斜面で実践されてみてはいかがでしょうか。
http://kouzo.jp/snowboardlab/carvingturn-mesen
コブに関してですが、「適している」形状はやはりラウンドボード(CTのような形状)です。
ハンマーヘッドの特徴を一言で言うと「雪面を捉えたら離さない」です。
なので、言い換えると若干ずらしにくいものもあります。(そこは技術ですが。。)
しかし、コブでずらしにくいは致命的かと・・・。
なので、コブに適している板と言われると普通のラウンドボードのCTだと私は思います。