(*実際に私が体験したことを元に書いてます)
花火大会の帰りで、多くの人が駅のフォームにいた。そのフォームへと登っているエスカレータで事件は起きた。
”ドドドド、ドン!!”
はじめは海外旅行から帰ってきた人のキャリーバッグが落ちたのかと思ったけど、周囲のざわめきが続くので何やら普通じゃないことが起きたんだとわかった。
僕は階段の下まで降りていたが、異常な空気感を察してすぐさま階段を駆け上った。
昇りエスカレータの出口を覗き込むと、
老人が倒れている!
エスカレータの途中でした大きな音はこの老人が倒れた音だったのだろう。
周囲には、その老人の知人らしき人が何名かいた。
その知人らがエスカレータの出口で横たわっている老人を引きずろうとしていたので、すぐさまやめさせた。こういうときは、すぐには体を動かさないのが鉄則だ。
周囲の安全が確保されているのを確認して、次に老人が息をしているか確認した。
お腹や胸が上下動するのが見てとれた。
「よかった・・・。呼吸はしている・・・。」
ただ、話しかけても返事はするものの声に覇気はない。
呼吸はしているから、万が一の嘔吐にそなえてそこから横向きに寝かせた。
そして、老人の知人にすぐに駅員を呼んでくるように頼んだ。
老人が倒れたのが駅のフォーム近くだったので、駅員はすぐにかけつけてきた。
「どうしましたか?」
「エスカレータの途中で転げ落ちてしまったみたいなんです。とりあず、呼吸と意識はあります。怪我は指を少し切ってしまっていますが大したことはなさそうです。」
老人を横向きに寝かせたまま、駅員に僕が知る限りの状況の説明をした。
知人らの説明を聞くと、どうやら相撲観戦の帰りでアルコールも飲んでいたようだ。それで、エスカレータから足を踏み外して転げ落ちた。
「とにかく、大事にはいたらなそうだったのでよかった・・・」
駅員と老人の知人がやりとりをしている間に、老人に話しかけると会話はできた。
ただ、念のため様子を見るのにどこか安静になれるところはないか駅員に聞いた。
「駅長室なら・・・」
もう少し、ここで様子を見て移動できそうなら移動しようか・・・。
そう考えていた矢先・・・
老人が突然、おう吐した。
「やばい!救急車を!119番を!」
すぐに救急車を手配してもらい、僕は気道が確保されているか再度確認した。
幸いにも、横向きに寝かせていたのがよかったみたいで、呼吸は続けられていた。
ただ、老人の状態がよくないことが明らかだった。
呼吸はしているものの、呼びかけても返事はない。
僕にできること言えば、老人に呼びかけ続けることと呼吸が続いているのを確認することぐらいだった。
あとは、救急車の到着を待つ。
・・・これほど時間は長いものなのか。
きっと時間にして5分程度だったと思う。
しかし、本当に何十分にも感じた。
「救急車はまだか・・・。」
何回も心の中で思った。
早く。。。
呼びかけているうちに老人の意識が回復し始めた。
そして、サイレンの音が聞こえた。
「来た!」
救急隊員が到着して、老人がエスカレーターから落ちたことなど簡単に状況の説明をした。
救急隊員は老人の頭を触り、
「痛くないですか?」
と大きめの声で聞いた。
その後も老人の体を触り、痛みがないかを聞いていた。
そうやって外傷がないのかを確認していったのだと思う。
幸い、小さな擦り傷以外の外傷はなさそうだった。
「おう吐などはしていませんか?」
駅員が聞いた。
「あ!おう吐しています!呼吸の確認をした1分後くらいに。」
すると、救急隊は折りたたみ式の担架を広げ始めて、
老人をその担架に乗せた。
それに気づいた老人は、
「え?担架?大丈夫やて!」
と、少し抵抗した。
「お父さん、少し吐いたみたいなので様子をみましょう」
「え?おれ吐いたの・・・?」
老人は、その時になって自分が意識を失っていたことに気づいたようだった。
そして、救急隊員になだめられて担架で運ばれた・・・。
僕にできることは終わったので、最後に、老人が倒れた時にすぐにかけつけた駅員に声をかけて帰ろうとしたら
「医療関係の方ですか?」と。
「いえ。スノーボードのインストラクータをやっているだけです。」
「そうですか。大変、迅速な対応で助かりました。ありがとうございました。」
「いえ。大きな外傷はないみたいでよかったです。では、失礼します。」
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今回は、本当にたまたまこういったケースに出くわしただけだった。
ただ、こういったケースで体が自然と反応するには、普段から意識しておく必要があると思う。
僕の場合は、インストラクターの講習会以外でも、2、3回は救命講習に参加したことがあった。それなので、安全に関しては普通よりかは意識していた。
それでも今回の対応が100%完璧かはわからない。
完璧かはわからないけど、やった方がいいことは知っていたから実践した。
ただ、それだけだ。
周りの目がどうとかじゃない。
その倒れている人に対して、何ができるのかを考えるのが大事だと思う。
たとえあなたに救急救命の知識が何も無くても、大きな声で助けを呼ぶことはできる。
「人が倒れてます!!助けてください!!!」
たったこの一言で、周りの人は気づいてくれる。
今回も、僕が老人のことをみている間に何人か看護師の人が来てくれた。
優しい心を持った人は大勢いる。
やり方を知らなくてもいい。
ただ、助けたいという想いがあれば方法はいくらでもあると思う。
いつ、どこで、あなたの大切な人が、倒れるかもわからない。
その時にどういった対応ができるかは、あなた次第。。
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